最近、飲食店の無断キャンセル(ノーショウ)が話題になることが多いです。直近では、お笑い芸人の店で60人の無断キャンセルというのが報じられました。たしかに無断キャンセルする客が悪いのは明白ですが、経営者としてはこの話には違和感を大きく感じます。
目次
飲食店の無断キャンセル問題は客の問題とともに店側は無断キャンセルが存在するものとして対応する必要がある
今回、ちょうど違和感を感じていたときに、たまたま知り合いの飲食店経営者とその件をSNSで少しやり取りしました。その経営者の方の意見なども参考にしながら私なりの対策をまとめました。
そもそも無断キャンセルというのは昔から存在したし、一定数の非常識な人は存在する
まず、そもそも無断キャンセルというのは今に始まった問題ではありません。テレビでは、専門家と言われる人がクリック一つで予約できるから同時に複数店を予約して簡単に無断キャンセルをすると言っていましたが、20年前の私が学生時代のバイト先でもよくありました。非常識な人による無断キャンセルもあれば、ライバル店への嫌がらせ、営業妨害的な形でされていたケースもあると思います。
確かにネット予約だから無断キャンセルするというのは一つの側面としてあるかもしれませんが、どちらかと言えば、「お客さまは神様」という間違った風潮が少しずつ是正されていて、客側の問題に対して店側が情報発信できる状況になってきた側面もあると思います。そもそもこの無断キャンセルが話題になったのは、予約客のために料理を作ったのに無断キャンセルが発生してしまい、たくさんの作った料理の処理に困りtwitterで呼びかける店が登場してきたということが発端だと思います。
これまでだと、無断キャンセルが発生したという事実を情報発信することができずにいたのが、情報発信できるようになったと言えます。
Umidassのようなレンタルスペースでも高額な取引は電話だけで予約を受けることはない
冒頭に違和感があると書きましたが、なぜ違和感があるかというと、私が運営するUmidassはレンタルスペース機能もあります。このレンタルスペースの予約は、電話やメールによる直接予約か、紹介サイト経由での予約です。
まず、紹介サイト経由での予約の場合には、クレジットカード等で先払いされています。ですから、どれだけ大きな予約だろうとお金を取れないということはありません。(数日前のキャンセルの場合には一部の支払といとなりますが。)ですから、紹介サイト経由の予約の場合には安心できます。その代りに、紹介サイトには20~35%の手数料を支払っています。
一方で、電話やメールによる直接予約の場合には、通常は当日の利用後のお支払となります。つまり、飲食店の無断キャンセルのような問題が発生する可能性があり、事実、稀にではありますが、無断キャンセルもあります。
多くの予約規模というのが、数千円レベルですので、一定数の無断キャンセルは存在するものとして電話やメールのみで予約を受け付けています。クレジット等で先払いしてもらう方法もありますが、そこまでは求めていません。
時折、数万円以上のレベルの予約というのが発生します。1週間~1か月以上連続利用したい、教室等で長期間の定期利用をしたいというケースです。この場合には、先払いをしていただくか、信用のある法人でなければ予約を受けていません。
Umidassはレンタルスペースですので、飲食店のように料理によるマイナスは発生しません。売上がゼロになるだけです。それでも、高額な予約を不用意に受けることによって別の予約をお断りすることを考えれば、支払いが確実な相手としか取引はしたくありません。
経験上、大規模な予約の場合には、支払方法に理解をしてもらえる
経験上、数万円以上の大規模な予約の場合には、長期利用の場合にも定期利用の場合にも、事前にスペースの見学であったり、利用方法などについてすり合わせや確認をする機会が発生します。
その際に、支払い方法についてもこちらから要望を出します。大規模な予約というのは、法人か大きなイベントです。ですから、先払いもしくは、請求書を発行しての請求という形に理解していただけます。
逆に小規模な友達同士でホームパーティをするような形での利用の場合には、利用料を当日に精算するケースが多いので、先払いとなると幹事の人が建て替えをすることになるので渋られるように思います。
つまり、無断キャンセルの対策というのは単なる予約ではなく「取引」という意識を持つことと予約内容に対してのリスクを計ること
無断キャンセルの対策としては、大きく2点あると考えています。一つは、「取引」という意識を持ち規模に合わせた「取引」の形を考える必要があるということ、もう一つは、予約内容に対してのリスクを計ることです。
客側の問題については触れていません。途中で書いたように一定数の非常識な人はいますし、常識的な人であっても何らかの事情でドタキャンということもありえます。無断キャンセルではなく、当日に連絡をもらってキャンセルとなっても、ほとんど状況は変わりません。
単なる予約ではなく「取引」という意識を持ち規模に合わせた「取引」の形を考える必要があるということ
「取引」というのが何を指すのかということは少し概念的な面があります。国語辞典的には、「商人と商人、または、商人と客との間で行われる経済行為。」と書かれています。
あまり私の語彙力では良い表現が思いつかないので「取引」と表現しましたが、予約を契約と考えた方がわかりやすいのかもしれません。
一般的なビジネスにおいて大きなお金が動く場合には、どこの誰ともわからない相手とは簡単に約束をすることはありません。まして、電話一本で注文を受けるということはありません。(大きなお金というのがどれくらいの金額なのかという点は、ビジネス内容によりますので、一概には言えません。その点については、次のリスクに関することで書きます。)
60人の無断キャンセルされたというお店のことを批判する気はないのですが、60人と言えば、かなりの規模のイベント、集まりだったことが想像されます。当日に「1人〇〇〇円ね」とお金を徴収するような集まりではにないことは確かです。主催者が手持ちがないというのは考えられないです。このケースでは、事前に何度かお店に訪れて打ち合わせをされているようなので、その際に一部だけでも支払いをお願いする交渉ができたと思います。その時に渋るようであれば、その時点で予約を取りやめるという判断ができたと思います。大きな予約はお店にとってありがたいので目先の利益につられてついその予約を失わないように動いてしまいがちですがそこはきちんと経営判断する必要があると思います。
また、事前支払いを要望しただけで別のお店に逃げられてしまうのであれば、それはお店の実力不足と捉えて多少は面倒でもこのお店を使おうと思ってもらえるお店にする努力が必要だということかもしれません。
よく考えると電話で予約いただいて、当日に料金を支払うお客さんとのやり取りも「取引」ですので、小規模だと「取引」ではないと受け止められると少しニュアンスが違うので、要は経営者が規模に合わせた「取引」の形を判断する必要があるということです。
予約内容とリスクを計るということ
前述のとおり、どれくらいの金額が大きな金額と呼ぶのか、大きな予約というのはビジネスによって異なります。要はその予約が無断キャンセルとなった場合のリスクの度合いによります。
例えば、30席しかないお店で30人の予約を受けるのは、当然のことながら大きな予約です。まして、金曜日や土曜日など他の予約が期待できるタイミングであればその予約を受けていなければ、別の予約を受けることができていたという機会損失も発生しやすいです。
一方で、300席のお店で30席の予約であれば、大きな予約とは言えないかもしれません。特に予約が無くても満席になるような大規模な繁盛店で、予約時間を過ぎてから無断キャンセルと判断した時点で空席に変更することですぐにお客さんで埋まるようなお店であれば、大きなリスクとは言えません。
また、飲食店の場合には、そのお店のメニューや調理キャパシティにもよります。お客さんの来店より前に調理をしなければいけないお店であれば、リスクは高まりますし、お客さんの来店後に調理するようなお店であればリスクは低いです。
私は、飲食店経営の経験はないので、これ以外にもスタッフの人件費、材料の仕入れなど書ききれていない、私が気づいていないリスクがあると思います。
ちなみにUmidassのようなレンタルスペースであれば、大規模な予約に対する影響は、別の予約を受けることができていたという機会損失リスクが大きいです。飲食店のように何かを用意するわけではありませんし、スタッフの配置も変わらないので。そのリスクから見て、どのような形の取引にするのかということを意思決定しています。
先払い形式の紹介サイトか予約時に支払可能なクレジット決済の導入が結局はノーリスク
結局のところは、Umidassが利用しているレンタルスペースの紹介サイトのように予約時に先払いする形式の紹介サイトを使うか予約時に簡単に支払ってもらえるクレジット決済の導入がノーリスクと言えるかもしれません。
飲食店というのは、注文内容によって支払額が変動するということがあるので先払いを導入すると差額発生時のトラブルなどがあるということで導入されないことが多いのかもしれませんが、最近、問題になるようなケースでは、コース料理で飲み放題というイメージが強いのでできそうな気がしますが、どうなんでしょうか。
飲食店紹介サイトの決済の有無については少し調べたのですが、「食べログ」や「ぐるなび」には無いようですね。(もしかしたら存在はするけど導入店舗が少ないのかもしれません。)こういった紹介サイトとしては、先払い方式の予約を導入もしくは宣伝するには良い気運ですね。
また、簡単に導入できそうなクレジット決済の仕組みとしては、【Square (スクエア)】があります。私は使ったことないですが、こちらを導入しているコワーキングスペースの話を聞くと悪くなさそうですし、【Square (スクエア)】の紹介としてホテルの導入メリットとして「ご予約時の支払いを受け付けられるようになり、キャンセルの頻度が減りました。」と事前支払いができることがPRされているので飲食店でも導入可能だと思います。
今はカードリーダー代が無料なので、クレジット決済自体を導入していないお店の方がクレジット決済の導入とセットで考えるのも良いと思います。特に現金決済は減らしていこうという風潮です。
▼▼【Square (スクエア)】について詳しくはこちら▼▼
結局、変えることができるのは自分で他人は変えることができない
最後はクレジット決済導入の宣伝も入れてしまいましたが、結局のところ、変えることができるのは自分で他人を変えることはできないということに行きつくのかもしれません。
無断キャンセルをする客のことをどういっても、その人たちが変わることはありません。であれば、自分たちのやり方を変えていくしかないのではないでしょうか。