コワーキングスペース コワーキングスペース運営にあたっての基礎知識 コワーキングスペース運営のポイント

コワーキングスペースは儲からないと言われるが飲食店よりはるかに廃業率は低い

前回の記事である「コワーキングジャパンを3年間運営して感じるコワーキングスペースの現状」に書いたように新規コワーキングスペースは増加していますが、潰れているスペースも多くあります。コワーキングスペースと収益について考察してみたいと思います。特にコワーキングスペースは儲からないと言われることが多いように思います。ですが飲食店よりはるかに廃業率は低いです。その点についてコワーキングジャパンを運営したり、さまざまなスペースの運営者とお話をする中で感じていることをまとめました。

コワーキングスペースの廃業(閉店)率は10~15%ぐらい?飲食店よりはるかに低い

コワーキングスペースの廃業率というのはきちんとしたデータがあるわけではありません。そもそもコワーキングスペースというものの定義が曖昧ですので、何を母数にするのかという点もあいまいです。また、コワーキングスペースとして運営していたスペースが別事業に転換して売上をあげている場合もあります。

そのうえで、コワーキングジャパンに掲載している800件以上のコワーキングスペースで見ると閉店しているお店は100弱ではないかと思います。思うというのは、少し脱線した話になりますが、コワーキングジャパンのようなポータルサイトを運営していて難しいのは開店したときには相手方から掲載依頼が来ますが、閉店する場合には知らせてくれることがほとんどないという点です。求人広告のような掲載料金をいただくビジネスモデルであれば、そのようなことはありませんが、無料掲載なので閉店をキャッチしにくいです。また、おそらく閉店していたとしてもはっきりとした情報が掴めなければ、「閉店」と表示することはなかなかできないということもあります。

コワーキングスペースは他業種に比べて廃業率が高いわけではない

コワーキングスペースは収益的に営業が難しいと言われます。そして、この閉店率をどう見るのかということも人によって異なってくるでしょう。わかりやすい比較対象として、飲食店の廃業率を調べてみると、開業3年で7割が廃業し、10年で9割が廃業するらしいです。日本のコワーキングスペースというものが10年も歴史がないので、10年間のデータはわかりませんが、飲食店よりもはるかに廃業率は低いと言えます。

全業種の廃業率を調べてみると、厚生労働省「雇用保険事業年報」や日本政策金融公庫の「新規開業パネル調査」における業種別廃業状況などさまざまなデータが出てきます。これらのデータは考え方や元データが異なるので一概に数字を比較することはできませんが、全業種平均の5~10%ぐらいです。

他業種との比較については深く掘り下げたわけではないので軽々に判断はできませんが、コワーキングスペースだからと言って廃業が多いわけではありません。コワーキングスペースに限らずあらゆる業種に言えることですが、儲ける能力のある人もいれば、儲ける能力のない人もいるということは当然です。厳しいと言われる業界、職種でも稼いでる人はいるし、その逆もいるということです。

コワーキングスペースが儲からないと言われるのは売上の金額にあるのか?

そんな中、コワーキングスペースは儲からないと言われるわけですが、これってどの業界でもあることかもしれません。私でいえば、コワーキングスペース以外にもWEB開発、ホームページ制作、お寺などに携わっていますが、どの業界も儲からない、これからは厳しいという話を聞きますので、このテーマはさして取り上げることでもなく、世の常ということかもしれません。

ただ、コワーキングスペースやコワーキングスペースのポータルサイトを運営する立場からしても、そしてその必要性を感じて運営している立場から考えてもコワーキングスペースが増えることは好ましいので、コワーキングスペースの収益性に疑問を感じる人のために私なりの見解をまとめていきたいと思っています。

で、そもそもコワーキングスペースが儲からないということについてですが、「儲からない」ということと「赤字になる」ということは少しニュアンスが違うのかもしれません。「儲かる」というのがあまりあるほど利益がでる状態を示すのであれば、確かにそれはそうかもしれないと思います。

そもそもコワーキングスペースは「場所」を提供するサービスです。コワーキングスペースはコミュニティが売りだという人もいますが、一般的に利用者は座って仕事をする場所に対してお金を払っています。ドロップイン利用で見た場合、多くのコワーキングスペースのドロップイン利用の料金は、1日利用で1,000~2,000円です。これが、デスク一つの売上の限界値と言ってもいいかもしれません。(回転する場合もありますが。。)

飲食店のように物を売っていないので、高いメニューを頼んでくれた、大量に頼んでくれたというような売上金額が大きくなる可能性が低いです。その点で売上金額は小さくなりがちです。

また、コワーキングスペースにはドロップインだけでなく月額利用という料金体系があります。コワーキングスペースがカフェと比較されることが多いので、どうしても飲食店とドロップイン料金を比較されるケースが多い気がしますが、ビジネスモデルとしてはスポーツジムと比較する方が正しいと言えます。月額利用料金はスペースによって幅がありますが、1~3万円くらいの価格帯が多いです。儲かる、儲からないという話の際に見落とされがちですが、コワーキングスペースの収益の柱は月額利用にあると私は思います。

セールやキャンペーンで爆発的な集客ができないため、売上を作るのには時間がかかる

売上を見るうえで、もう一つのポイントは「開店サービス」というようなキャンペーンをして一度に多くの集客ができるビジネスではありません。コワーキングスペースはその対価として提供されるのはデスクスペースだけですので、何かをする人しか利用しません。何かをサービスして人が集まるということができません。

また、前述のようにスポーツジムのように月額会員制のビジネスですので、いきなり多くの人が会員にあるというのも立地、経営者の人脈等、何かの理由がないと難しいです。一方で、会員制のビジネスなだけに売上は安定し、右肩上がりになりやすいとも言えます。

私がコワーキングスペースに関わりだした2015年ごろにいくつかのスペースで話を聞いたときには、会員数が黒字になるぐらいまで1年ぐらいかかったという話はよく聞きました。当時はコワーキングスペースの認知自体が低かったので、認知してもらうところからスタートだったかと思いますが、今は認知という点では改善されていると思います。その分、他スペースとの競争という環境になっているとも言えるかもしれません。

売上金額は小さくても経費も小さく予測しやすいのがコワーキングスペース

ここまで売上について書いてきましたが、収益を考えていく場合に、売上と同時に大切なのが経費です。コワーキングスペースは売上金額は小さいかもしれません。小さいというのが何と比較してということはあるかもしれませんが、例えば、飲食店と比べるとデスク面積あたりの売上は数分の1だと思います。

しかしながら、同じように飲食店と比べると経費も小さいです。スタッフは受付だけで運営することができ、個別接客や調理などが必要ありません。スペースの広さやスペースの運営方針によりますが、スタッフ一人でも運営できます。しかも、そのスタッフは常に業務があるわけではなく、別の仕事をすることもできます。また、仕入れなどは発生せず、食材廃棄のようなコストも発生しません。

すごく乱暴に言えば、家賃、1人の人件費、光熱費・回線費しか経費がかからず、突発的なコストも発生しにくいビジネスです。

閉店するスペースは1年以内に閉店するケースが多い気がする

閉店するコワーキングスペースの情報は入ってきにくいのですが、閉店するところは1年以内というケースが多いように思います。最短で1か月というところもありました。

これからコワーキングスペースの運営を考えている場合には、固定客がつくまでに時間がかかるので、その間の運転資金の準備は必要だと思います。固定客がつくまでの期間はおそらく地域差もあると思います。郊外や地方だとより多くの時間がかかると思います。また、初期投資も大切です。新規オープンするお店ですからきれいにスタートしたいものですが、デスクも椅子も2日目には中古です。中古オフィス家具で揃えたりして初期投資を抑える工夫も大切かと思います。

余談ですが、大阪であれば私には倒産した会社のオフィス家具のルートがタイミングが合えば、良いオフィス家具を格安で手に入れることができますので、ご相談ください。

コワーキングスペースで利益を出す/営業を継続するためにはどうしたら良いのか

どの事業でも儲けるか儲からないかは運営者次第です。コワーキングスペースも同様です。コワーキングスペースの経営者やスタッフの能力によるソフト的な取り組みで集客しているケースもありますが、ソフト面はわかりにくいのでハード的にわかりやすい方向性をいくつかピックアップしたいと思います。

月額会員サービスを導入し、きちんと課金できる仕組みを導入する

月額会員制の料金サービスを導入することと、きちんと継続的に課金できる仕組みを導入することは大切です。表現は悪いですが、利用されない幽霊会員の売上は大きいです。(この点は小さなスペースではドライになれずに難しいと思いますが。。)

また、月額会員を利用されるためのサービスである、「登記利用」や「住所利用」であったり、固定席やシェアオフィスをサービスに取り入れるということで安定した売上をあげることができます。

スタッフの人件費を生み出す仕組みを作る

コワーキングスペースの場合、広いスペースであれば、家賃は高くなりますが、かなり広いスペースであってもスタッフ数は1~2名で最低限の運営は可能です。そういう意味では、広いスペースを用意した方がスタッフの人件費が売上に対して相対的に低くなります。

スペースにおける受付などの接客業務や掃除などの業務にスタッフがフルに当たらないといけないほどの広さのスペースであれば、スタッフの人件費を効率よく使えていると言えますが、小さなスペースの場合、コワーキングスペースに関する業務だけではスタッフが手空きになります。

そこで別の仕事を与えれるようにしておくことでスペース利用料以外の売上をあげることができます。利用者の方の入力作業などの単純作業を請け負うなどというのも良いかもしれません。

レンタルスペース(貸会議室)やイベント開催

レンタルスペースや貸会議室としてスペース貸しを提供しているスペースも少なくありません。ビジネス街であれば会議室としての利用が見込めますし、Umidassのような郊外のスペースであってもママ会やボードゲームなどでの利用が多くあります。レンタルスペース提供のおいしい点は売上があがるだけでなく、主催者が集客した人にスペースの存在を知ってもらえるというメリットもあります。

また、イベント開催というのも同様のことが言えます。

そもそもオフィスの一部をコワーキングスペースとすることで目標値を下げる

私の運営しているUmidassもこの側面があるのですが、コワーキングスペース単独の事業ではなく他の事業をするオフィスの一部をコワーキングスペースとして運営することで単独の収益を厳しく見なくてよい状態にするという方向性があります。

あるスペースなどは、本来オフィスとして必要なフロアの倍のフロアを借りて、半分をコワーキングスペースとしています。自社スタッフが交代でコワーキングスペースの業務をこなすことで、オフィスの家賃を稼ぎつつ、他事業者との出会いを持つことができるという形で運営されています。前述のスタッフの人件費の件と被る内容ではあるのですが、個人的には小さなスペースはこの方向性が一番だと思っています。

 

 

他にもさまざまな工夫、取り組みをされているスペースがあります。また、多店舗展開するコワーキングスペースも増えてきました。そういう意味では儲からない事業ではありません。ただ、規模を拡大していくようなスケールする儲け方というのにはかなり工夫がいると思いますがたくさんのプレイヤー増えたら良いなと思います。

最後に1点だけ、この業界で気になる点を付け加えるなら大企業や自治体によるスペース運営かなと思います。企業や自治体によっては売上なくても別のメリットがあるという形で運営されているケースもあります。コワーキングスペースと似た事業で「有料自習室」がありますが、自治体で図書館等を自習エリアとして開放している地域では「有料自習室」がほとんどありません。コワーキングスペースはコミュニティが大切と言いますが、もともと仕事や勉強に集中できる場所を探しているか、安価なオフィスを探している人が多いので、地域によっては代替できるサービス、無料のサービスがあれば集客には難易度があるのかもしれません。

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